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大阪万博に見る「月の石」と「火星の石」の価値

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大阪万博に見る「月の石」と「火星の石」の価値

大阪万博に見る「月の石」と「火星の石」の価値

2025/03/05

1970年の大阪万博では、アメリカ館で展示された「月の石」が大盛況を博しました。
そして、今年の大阪万博では、なんと「火星の石」が展示されると発表されました。

 

そんな注目の万博に先駆けて、大阪市立科学館で開催されている企画展を訪れ、「月の石」と「火星の石」を見てきました。

 

なぜ「火星の石」の展示がこれほど話題になっているのか、そして科学館で先に見られた理由とは?その秘密に迫ります。

地球に「月の石」は、300Kg以上あるらしい

地球にある「月の石」は、4つのパターンで採取されています。

 ・アメリカのアポロ計画(1961年~1972年)

 ・旧ソ連のルナ計画(1959年~1976年)

 ・中国の探査機(2020年、2024年)

 ・隕石として地球に落ちてきた

 

月探査といえばアポロ計画が印象深いのですが、旧ソ連が同時期にサンプルリターンをしていました。中国は最近です。こちらは月の裏側の石の採取にも成功しています。
有人探査は、アポロ計画のみです。
 

どれぐらいの分量を持ち帰ったのかなと調べていると、旧ソ連は3機でトータル約300グラム。中国は2機でトータルで約1700グラムほどだそうです。

アポロ計画では何と!6機でトータル382キログラムほど持ち帰っているので驚きです。
(中国と旧ソ連は「グラム」、アメリカは「キログラム」です)

 

持ち帰った月の石の総量を動物の体重に例えると、旧ソ連はハムスター、中国は猫ちゃん、アメリカは子象ぐらい。

 

アポロ計画えぐい・・・

 

ちなみに隕石として「これは月から来たものだ!」と判定されているものは、90個以上あるそうです。

大気圏突入をしているし、地球で何万年も過ごしていたりするものもあると思うので、成分が変化している場合もありそうですね。

大阪市立科学館で展示(上記の写真)されていたのは、玄武岩とあったので「月の海」と呼ばれる、色が濃い部分の石だと思います。

 

濃い部分だけど思ったより色が薄いように感じます。当たり前ですが、月の色だなという感想。玄武岩は地球にも存在する岩石ですが、成分がかなり違うそうです。

 

アポロ計画で人類が初めて月に降り立ったのが1969年のアポロ11号。月の石が万博でお披露目されたのは翌年なので、時代背景からして凄いタイミングでの展示だったのですね。

 

ちなみに、1970年の大阪万博で展示されたものは、アポロ12号が持ち帰ったものです。
大阪市立科学館に展示されていたものは、1970年の大阪万博の翌年に打ち上げられたアポロ15号が採取した月の石(実物)です。

持ち帰られたことがない「火星の石」

2025年の大阪万博では「火星の石」を展示するとニュースになりました。

月からは石をたくさん持ち帰っていますが、火星はまだ持ち帰った事例はありません。

 

いま、ちょうど火星を探査しているNASAのパーサヴィアランスが採取しているものを、持ち帰る計画があります。持ち帰るための回収ランダーが地球を出発するのは2028年、戻ってくるのが2033年予定だそうです。楽しみ。

 

いま地球にある火星の石はすべて「隕石」ということになります。火星に隕石が衝突した衝撃で宇宙空間に放り出されたカケラが、地球に落ちてきたものです。

科学館でも見ることができる火星の石ですが、万博で展示されるのはその中でも貴重な1つ。


南極の昭和基地近くで発見され、初めて一般公開される大きな隕石。このサイズの火星の石が展示されるのは、珍しいことだそうです。それに火星に水が存在した証拠となる重要な情報を持っていると言われる貴重な石でもある。(火星の石が全部、その情報を持っていると限らない)

 

でも、センセーショナルな報道は、前回の万博と比較されているだけって感じがして勿体無い。

 

今回の万博で展示される火星隕石を保管している、国立極地研究所の資料を拝読しました。

この貴重な石は何万年もかけて火星から地球に来て、何万年も南極で過ごしていました。
宇宙から落ちてくる隕石も海に落ちたら見つかることはなかったし、陸に落ちて雨風にさらされたら風化してしまう。しかも非常にもろい岩石成分であるナクライトに分類されている。そんな隕石がたまたま南極に落ちて、冷凍保存の状態で数万年にわたってこの大きさで保たれていました。発見されたのは2000年だそうです。(ナクライトは、持ち運ぶだけでぽろぽろカケラが剥がれ落ちるらしい)

 

これまでに火星を探査したローバーや探査機たちが測定した岩石や大気の情報があるからこそ、隕石が火星由来であることが分かります。1970年代に発見されていたとしても、この価値には辿り着かなかったかもしれません。

 

奇跡が重なり、偶然この時代に発見されたからこそ、凄いものだと分かる石でもあります。

 

前回の万博は月面探査というタイミングでした。今回の万博は隕石が火星由来と分かるような時代になったタイミングでの展示になります。

 

月を目指していたあのころ。
火星をめざすこれから。

 

大阪万博の展示から、宇宙探査の移り変わりを感じることができます。

石は「星の記憶」が詰まった小宇宙

石は見るだけでは「ただの石」なんですよね。(当たり前)

 

でも調べれば調べるほど、石には情報がたくさん詰まっていることに気づかされます。


「情報」ではなく「星の記憶」という表現が好きです。パワーストーンが人気ですが、これだけ情報や記憶が詰まったものだからエネルギーを持ってるのも頷けます。

 

とある人に「ただの石だけど、夢がありますね」と言われました。夢どころか、謎も情報も星の記憶もワクワクもぎゅうぎゅうに詰まっていますよね。

 

まるで小宇宙のよう。

 

色んな知識を知ってから見る石は、ただの石じゃなくなるかもしれない。

 

そんなことを思いました。


万博で展示される火星の石を所蔵している国立極地研究所の関連記事

「火星の石」を実際に発見した国立極地研究所の今榮直也助教授のインタビューです。
極地研とは?というところからインタビューがスタートしているので、初めての方でも読みやすい記事です。

「南極観測隊」が発見! 火星の石に秘められた約1000万年前の物語

 

2025年大阪万博で展示される火星の隕石が発見され、火星由来だと分かるまでのストーリです。
発見、分析の過程ごとにポイント解説があり、分かりやすいです(そして泣ける)

火星隕石が私たちにささやく、宇宙といのちのつながり

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