香
2025/10/22
木犀の香や金星の方角に
-山口誓子(昭和19年10月9日)
夏が長くなり、秋が短くなりつつある2025年。 それでも窓を開けると金木犀が香ったのが先週のこと。
戦況が悪化していく秋の夕暮れにも、木犀の香りがふわっと感じられていたのだと思う。この時期、金星は宵の明星として夕方の西の低い空に輝いていた。句だけを読むと、秋の涼やかな夕暮れと金星の煌めきを想うのだけど、作られた時代を見ると胸がギュッとなる。
そして、今年の秋の金星は明けの明星として、夜明け前の東の空にある。
星座は太陽系の外の恒星たちで成り立ち、その光は毎年同じ月日・時間に、ほぼ同じ場所に輝いている。昭和の時代も、令和の時代も10月初旬の夕暮れの西の空には、へびつかい座がいる。
しかし、惑星たちは、1年という周期ではめぐらない。地球から見ると星座とは違う動きをしているように見える。惑う星と呼ばれるのはそのため。
空を見上げるときに感じるものはたくさんある。風が当たる感じ、周囲の匂いや音、雲の様子や惑星の位置。
星座も70年経つと少しだけズレる。
でもきっと、
木犀の香りは変わらないんだろうな。
そんなことに思いを馳せながら、
夕暮れの空を見上げる。


